交通事故で後遺障害が残った場合、「逸失利益(いっしつりえき)」という言葉を初めて耳にする方は少なくありません。
しかし、逸失利益は交通事故の補償の中でも特に分かりにくい項目であり、「保険会社から説明を受けたものの、よく理解できなかった」というご相談も多くあります。
とりわけ、自損事故などで利用する人身傷害保険では、保険会社が算定した逸失利益がそのまま支払われることもありますが、その算定方法や前提条件について疑問が生じるケースもあります。
当事務所でも、「後遺障害等級は認定されたが、逸失利益の金額が思っていたより低い」「保険会社から計算方法の説明を受けたが、よく分からない」というご相談をいただくことがあります。
もっとも、交通事故の逸失利益は、一律の計算式で決まるものではありません。後遺障害の内容や職業、収入、年齢、将来の就労状況など、さまざまな事情を踏まえて検討されるため、事故ごとに算定内容が異なります。
本記事では、交通事故における逸失利益の基本的な考え方から、人身傷害保険における算定の特徴、実務で問題となりやすいポイントまで、交通事故案件を取り扱う弁護士の視点から分かりやすく解説します。
- 逸失利益とは何か
- なぜ逸失利益が重要なのか
- 人身傷害保険でも逸失利益が問題になることがあります
- 逸失利益はどのように算定されるのか
- 基礎収入とは
- 労働能力喪失率とは
- 労働能力喪失期間とは
- 中間利息控除とは
- 人身傷害保険でもこれらの要素が問題になることがあります
- 人身傷害保険では逸失利益はどのように算定されるのか
- 逸失利益は『計算式』より『前提』が重要です
- 実務では『逸失利益だけ』が問題になることがあります
- 保険会社から提示を受けたら確認したいポイント
- 当事務所で多いご相談
- 逸失利益について保険会社との協議を検討するのはどのような場合か
- 実務ではどのような点を確認するのか
- このような場合は一度内容を確認してみましょう
- 当事務所でよくお受けするご相談
- 逸失利益の検討は『増額ありき』ではありません
- 逸失利益に関するよくあるご質問(FAQ)
- まとめ|逸失利益は『金額』ではなく『算定の前提』を確認することが大切です
- 関連記事のご案内
- 当事務所のサポート
逸失利益とは何か
交通事故の補償には、治療費や慰謝料だけでなく、「将来発生する損害」についても補償の対象となる場合があります。その代表例が逸失利益です。
交通事故によって後遺障害が残ると、事故前と比べて仕事に支障が生じたり、将来得られるはずだった収入が減少したりすることがあります。このような将来の収入減少などの経済的損失を評価する考え方が、逸失利益です。
交通事故では、後遺障害等級が認定された事案で問題となることが多く、補償額にも大きく影響する重要な損害項目です。もっとも、「後遺障害が認定されれば必ず高額な逸失利益が認められる」というわけではありません。実際の算定では、後遺障害の程度や就労状況など、個別具体的な事情を踏まえて検討されます。
慰謝料とは異なる補償です
逸失利益と混同されやすいものとして、慰謝料があります。慰謝料は、交通事故によって受けた精神的苦痛を金銭的に評価するものです。一方、逸失利益は、事故による後遺障害が将来の収入や就労に与える影響を経済的な観点から評価するものです。つまり、両者は補償の目的そのものが異なります。そのため、慰謝料には納得していても、逸失利益の算定について疑問が生じるケースもあります。
後遺障害との関係
逸失利益が問題となるのは、後遺障害が認定されたケースが中心です。後遺障害が残ることで、従来どおり働くことが難しくなった、配置転換を余儀なくされた、昇進や昇給への影響が考えられる、将来的な就労機会が制限される可能性があるなど、事故前とは異なる状況になることがあります。
もっとも、これらの影響は後遺障害等級だけで決まるものではありません。実際には、仕事内容や働き方、症状の内容などを総合的に考慮して検討されます。
なぜ逸失利益が重要なのか
交通事故では、治療費や慰謝料に注目が集まりがちです。もちろん、これらも重要な補償項目です。しかし、後遺障害が残った場合には、逸失利益が補償全体に占める割合が大きくなることがあります。そのため、交通事故実務では、逸失利益が重要な争点となるケースも少なくありません。
事故後の生活に長く影響するため
治療費や休業損害は、事故後の一定期間、すなわち基本的には「症状固定」までの損害を対象としています。これに対し、逸失利益は、後遺障害による将来への影響を評価するものです。そのため、事故後の生活設計や就労への影響を考える上でも、重要な意味を持つ補償項目といえます。
算定には専門的な検討が必要になることがある
逸失利益は、単純に「収入×年数」で計算できるものではありません。実務では、基礎収入・労働能力喪失率・労働能力喪失期間・ライプニッツ係数(中間利息控除の考え方)など、複数の要素を踏まえて検討されます。これらの詳しい内容については、この後順番に解説してゆきます。
人身傷害保険でも逸失利益が問題になることがあります
交通事故の逸失利益というと、加害者側保険会社との示談交渉をイメージされる方も多いでしょう。しかし、逸失利益が問題となる場面は、それだけではありません。自損事故などで利用する人身傷害保険でも、後遺障害が認定された場合には、保険会社が逸失利益を算定して保険金額を提示することがあります。
人身傷害保険会社との協議が必要となるケース
多くのケースでは、保険会社が提示した保険金額に納得し、そのまま手続が終了します。一方で、逸失利益の算定根拠がよく分からない、前提となる収入や就労状況が実態と異なるのではないか、後遺障害による影響が十分に考慮されていないように感じる、などの疑問が生じることもあります。そのような場合には、提示された内容を確認し、必要に応じて保険会社と協議を行うことが考えられます。
実務では逸失利益だけが争点になることもあります
交通事故というと、慰謝料や過失割合を巡る交渉を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、人身傷害保険では、治療費・休業損害・その他の保険金については特に争いがなく、逸失利益の算定のみが問題となるケースもあります。
当事務所でも、そのようなご相談をいただくことがあり、提示された算定内容や前提条件を確認した上で、必要に応じて保険会社との協議を行っています。なお、事故の内容や保険契約の内容によって検討すべき事項は異なるため、すべての事案で増額が見込まれるわけではありません。
逸失利益はどのように算定されるのか
逸失利益は、「将来得られたはずの収入が、後遺障害によってどの程度減少すると考えられるか」を金銭的に評価するものです。もっとも、将来の収入を正確に予測することはできません。そのため、交通事故実務では、一定の考え方に基づいて算定が行われます。
実際の算定では、主に次の4つの要素が用いられます。
- 基礎収入
- 労働能力喪失率
- 労働能力喪失期間
- 中間利息控除(ライプニッツ係数など)
これらはそれぞれ異なる意味を持っており、一つでも前提が変わると、逸失利益の金額が大きく変わることがあります。そのため、保険会社から提示された金額を見る際には、「最終的な金額」だけでなく、「どのような前提で算定されたのか」を確認することが重要です。
基礎収入とは
逸失利益の出発点となる金額
逸失利益を算定するためには、まず「事故がなければ将来どの程度の収入を得られたと考えられるか」を検討する必要があります。その基準となるのが基礎収入です。会社員であれば給与、自営業であれば事業所得などが参考となることが一般的ですが、実際には職業や就労状況によって検討すべき資料は異なります。
職業によって考え方が異なることがあります
例えば、会社員・公務員・自営業者・個人事業主・パート、アルバイト・専業主婦(主夫)・学生・無職では、基礎収入を検討する際の事情が異なります。そのため、「誰でも同じ方法で計算する」というものではありません。実際の交通事故実務では、収入資料や就労状況などを踏まえて個別に検討されます。
弁護士の実務でよくあるご相談
「前年の年収だけで計算されるのでしょうか。」
このようなご質問をいただくことがあります。基礎収入は重要な算定要素ですが、事故の内容や就労状況、保険契約の内容などによって確認すべき事情は異なります。そのため、「前年の年収だけで決まる」と一概にはいえません。
労働能力喪失率とは
後遺障害が仕事へ与える影響を評価する考え方
逸失利益では、事故後も仕事を続けられるかどうかだけでなく、「仕事を続けられるとしても、事故前と同じように働けるか」という点も考慮されます。そこで用いられる考え方の一つが労働能力喪失率です。これは、後遺障害によって労働能力がどの程度影響を受けると考えられるかを評価するための指標です。
後遺障害等級だけで機械的に決まるわけではありません
交通事故では、後遺障害等級が認定されます。もっとも、実務では「後遺障害等級だけで、すべての事案が同じ評価になる」とは限りません。実際には、症状の内容・職業・業務内容・日常生活への影響なども踏まえながら検討されることがあります。そのため、同じ等級であっても、個別事情が問題となることがあります。
労働能力喪失期間とは
どのくらい将来に影響が続くのかという考え方
逸失利益では、「どの程度の割合で働けなくなるか」だけでなく、「その影響がいつまで続くと考えるか」も検討されます。これが労働能力喪失期間です。後遺障害の内容や程度によって、将来への影響の考え方は異なります。そのため、一律の年数が適用されるわけではありません。
将来を予測する難しさがあります
逸失利益は将来の損害を評価する制度です。そのため、事故後何十年にも及ぶ将来を一定程度予測する必要があります。実際には、年齢・後遺障害の内容・就労状況などを踏まえて検討されます。この点も、逸失利益の算定が複雑になる理由の一つです。
中間利息控除とは
将来のお金を現在受け取ることを調整する考え方
逸失利益は、本来であれば将来少しずつ発生する収入を、一括して受け取ることになります。そのため、「将来受け取るはずのお金を現在受け取る利益」を調整する必要があります。これを中間利息控除といいます。交通事故実務では、この調整のためにライプニッツ係数などの考え方が用いられています。
計算式を覚える必要はありません
ライプニッツ係数という言葉を聞くと、「難しい計算をしなければならない」と感じる方もいるかもしれません。しかし、多くの場合、被害者の方が自分で係数を計算する必要はありません。重要なのは、「逸失利益は単純な掛け算ではなく、複数の要素を組み合わせて算定されている」という点を理解することです。
人身傷害保険でもこれらの要素が問題になることがあります
ここまで紹介した基礎収入・労働能力喪失率・労働能力喪失期間・中間利息控除は、交通事故実務における逸失利益の代表的な算定要素です。人身傷害保険でも、保険会社が逸失利益を算定する際には、これらの考え方が問題となることがあります。もっとも、保険契約には約款があり、その内容や事案ごとの事情によって検討の方法は異なります。そのため、提示された金額だけを見るのではなく、「どのような前提で算定されたのか」を確認することが重要です。
実務では『計算結果』より『前提』が争点になることがあります
当事務所でも、「計算式が間違っているのですか。」というご質問を受けることがあります。しかし、実務では、単純な計算ミスよりも、基礎収入をどのように考えるか、後遺障害が仕事へ与える影響をどう評価するか、将来への影響をどのように考えるかといった算定の前提が問題となることが少なくありません。そのため、人身傷害保険会社から提示を受けた場合には、「なぜこの金額になったのか」という算定の考え方を確認することが大切です。
人身傷害保険では逸失利益はどのように算定されるのか
交通事故で後遺障害が認定されると、人身傷害保険会社は約款に基づき保険金を算定します。その中には、将来の収入減少などを補償する逸失利益が含まれることがあります。もっとも、人身傷害保険会社が提示した逸失利益の金額は、単純な計算式だけで決まるものではありません。
保険会社は、契約内容・後遺障害等級・事故による症状・就労状況・収入資料などを踏まえながら、約款に基づいて保険金額を算定します。そのため、提示された金額を見る際には、「いくら支払われるのか」だけではなく、「どのような前提で算定されたのか」を確認することが重要です。
逸失利益は『計算式』より『前提』が重要です
逸失利益というと、インターネット上では計算式ばかりが紹介されていることがあります。しかし、実務で問題となるのは、計算そのものよりも計算の前提です。例えば、基礎収入をどのように考えるか、労働能力への影響をどのように評価するか、将来の就労状況をどのように考えるかといった前提によって、最終的な金額は変わることがあります。そのため、保険会社から提示された金額について疑問を感じた場合には、「計算式が違うのではないか」と考えるよりも、「どのような前提で算定されているのか」を確認することが大切です。
収入に関する前提
逸失利益では、将来得られるはずだった収入を評価するため、基礎収入が重要な要素になります。もっとも、収入といっても、給与所得・事業所得・パート、アルバイト収入・家事従事者としての労働の評価など、就労状況によって事情はさまざまです。そのため、どの資料を基礎として算定するかによって、結果に違いが生じることがあります。
後遺障害が仕事へ与える影響
同じ後遺障害等級であっても、仕事への影響は一人ひとり異なります。例えば、デスクワークが中心の方と、重量物を扱う仕事をされている方では、同じ症状でも就労への影響が異なる場合があります。また、事故前と同じ勤務先で働き続けているとしても、仕事内容の変更・残業の制限・昇進への影響など、事故前と全く同じ状況とはいえないケースもあります。このような事情も、逸失利益を検討する際の重要な要素となることがあります。
将来についての評価
逸失利益は将来の損害を対象とする制度です。そのため、事故から数年後、あるいは数十年後までを見据えた評価が必要となります。もっとも、将来の状況を正確に予測することはできません。そのため、実務では一定の考え方に基づいて評価が行われます。
実務では『逸失利益だけ』が問題になることがあります
交通事故というと、治療費・慰謝料・休業損害・過失割合など、さまざまな点について争いになるイメージを持つ方も多いでしょう。しかし、人身傷害保険では、実際には逸失利益だけが問題となるケースも少なくありません。
例えば、治療費については支払済み、休業損害にも争いがない(約款に従った認定で争えない)、後遺障害等級も認定されているという状況で、『逸失利益の算定だけが疑問として残る』というケースです。このような事案では、保険会社がどのような前提で逸失利益を算定したのかを確認することが重要になります。
弁護士の実務でよくあるご相談
「保険会社から人身傷害保険金の支払通知が届きました。治療費やその他の補償には納得しています。ただ、逸失利益だけが思っていたより低いように感じます。」
このようなご相談は、当事務所でも実際にお受けすることがあります。もちろん、提示額が適切であるケースも少なくありません。一方で、算定の前提となる事情について確認した結果、さらに検討の余地があることが分かる場合もあります。重要なのは、「低い気がする」という印象だけで判断するのではなく、保険会社がどのような前提で算定したのかを確認することです。
保険会社から提示を受けたら確認したいポイント
人身傷害保険会社から逸失利益を含む保険金額が提示された場合には、金額だけではなく、その算定の前提についても確認しておくことが望ましいでしょう。
どの資料を基礎に算定しているか
例えば、収入資料・就労状況・後遺障害等級など、どのような資料を前提としているかを確認することで、算定内容への理解が深まります。
就労状況が正しく反映されているか
事故前後で仕事内容や働き方に変化がある場合には、その事情がどのように評価されているかも確認したいポイントです。もっとも、事故後も勤務を継続しているからといって、直ちに仕事への影響がないという結論になるわけではありません。個別事情を踏まえて検討されることになります。
説明を受けても理解できない点はそのままにしない
逸失利益の算定は専門的な内容を含むため、保険会社から説明を受けても、「よく分からないまま終わってしまった」という方も少なくありません。分からない点がある場合には、算定の前提や根拠について説明を求めることも重要です。
当事務所で多いご相談
交通事故案件(一般的な、加害者・相手方がいるケース)では、「損害賠償金の中の慰謝料を増やしたい」というご相談が最も多くなります。一方、当事務所では、人身傷害保険金のうち、逸失利益だけについてご相談をいただくケースも少なくありません。
例えば、自損事故で後遺障害が認定された、人身傷害保険会社から保険金額が提示された、他の補償には納得している、逸失利益の算定根拠だけがよく分からない、というご相談です。このような場合には、保険会社がどのような前提で逸失利益を算定したのかを確認し、必要に応じて約款や資料を踏まえながら検討を行います。
なお、事案によっては保険会社の算定が適切であり、増額交渉を行う余地がないケースもあります。また、人身傷害保険においては、休業損害や慰謝料などが約款に従って保険会社の裁量の余地なく認定されている場合が多く、そのような費目についても増額交渉の余地がありません。そのため、まずは現在の算定内容を客観的に確認することが重要です。
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逸失利益について保険会社との協議を検討するのはどのような場合か
人身傷害保険では、多くのケースで保険会社が提示した保険金額に納得し、そのまま手続が終了します。一方で、提示された逸失利益について、「この金額になった理由がよく分からない」「事故後の働き方が十分に反映されているのだろうか」と疑問を感じる方もいらっしゃいます。もちろん、「疑問を感じた=算定が誤っている」というわけではありません。しかし、逸失利益は複数の前提をもとに算定されるため、その前提を確認することには意味があります。
金額だけで判断しないことが大切です
保険会社から保険金額の提示を受けると、多くの方は最終的な金額に目が向きます。しかし、逸失利益では、「いくら支払われるか」だけではなく、『なぜその金額になったのか』という算定の過程も重要です。例えば、どの収入資料を基礎にしたのか、後遺障害による影響をどのように評価したのか、将来の就労についてどのように考えたのかなど、複数の要素が積み重なって最終的な金額が決まります。そのため、金額だけを見て判断するのではなく、算定の前提も確認することが望ましいでしょう。
説明を受けても理解できない場合
逸失利益は交通事故実務の中でも専門性が高い分野です。保険会社から説明を受けても、専門用語が多く理解できなかった、計算方法までは説明されなかった、算定の前提が分からない、というケースもあります。そのような場合には、疑問点を整理しながら内容を確認することで、納得したうえで手続を進めやすくなります。
実務ではどのような点を確認するのか
当事務所へご相談いただいた場合、まず「増額できるかどうか」という結論から検討するのではなく、保険会社がどのような前提で逸失利益を算定しているかを確認します。逸失利益は事故ごとに事情が異なるため、最初に算定の前提を整理することが重要だからです。
基礎資料を確認する
まず確認するのは、保険会社がどのような資料をもとに逸失利益を算定しているかです。例えば、収入に関する資料・就労状況・後遺障害等級・医療関係資料・保険契約の内容などを確認します。どの資料が採用されているかによって、算定の前提が見えてくることがあります。
事故後の実際の状況を確認する
逸失利益では、事故後の生活や就労状況も重要な事情になります。例えば、配置転換があった、業務内容が変わった、残業ができなくなった、昇進や昇給に影響が生じた、自営業の業務内容を変更した、以前のように家事ができなくなったなど、事故後の状況が事故前と変化していることがあります。これらの事情は、個々の事案に応じて検討されます。
算定の前提を整理する
実務では、「計算式そのもの」よりも、『なぜその前提で計算したのか』が重要になることがあります。そのため、どのような収入を基礎としたのか、労働能力への影響をどう評価したのか、将来の就労をどう考えたのかなどを一つずつ整理しながら確認します。
このような場合は一度内容を確認してみましょう
すべての案件で保険会社との協議が必要になるわけではありません。もっとも、次のような場合には、一度提示内容を確認することも選択肢の一つです。
逸失利益だけが想定より低いと感じる
治療費や休業損害などには納得しているものの、逸失利益だけが予想より低いと感じることがあります。そのような場合には、「計算が間違っている」と考えるのではなく、まずは算定の前提を確認することが大切です。
保険会社から算定根拠について十分な説明を受けられていない
保険会社から金額だけが提示され、「どのような考え方で算定したのか分からない」というケースもあります。算定の前提を理解することで、提示内容への納得につながる場合もあります。
事故後の仕事への影響が十分に反映されているか不安
事故後も勤務を続けている場合でも、仕事内容や勤務条件が変わることがあります。そのような事情がある場合には、事故後の実際の状況を整理しておくことが重要です。
当事務所でよくお受けするご相談
当事務所では、交通事故全般のご相談だけではなく、自損事故などにおける人身傷害保険金のうち、逸失利益についてご相談いただくケースがあります。実際によくあるご相談としては、次のようなものがあります。
『他の補償には納得しています』
ご相談者の中には、治療費、休業損害、その他の補償については特に疑問がないものの、逸失利益だけについて、「なぜこの金額になったのか知りたい」という方もいらっしゃいます。
『保険会社の説明が理解できませんでした』
逸失利益は専門用語が多く、一度説明を受けても、十分に理解できないことがあります。そのような場合には、算定の考え方を整理することで、疑問点が明確になることがあります。
「逸失利益だけ相談できますか」
このご質問も少なくありません。実務では、治療費や慰謝料などには争いがなく、逸失利益だけについて確認や協議を行うケースもあります。当事務所でも、事故の内容や保険契約、提示された資料などを確認した上で、逸失利益に関するご相談をお受けしています。なお、確認の結果、保険会社の算定が適切と考えられる場合もあります。そのような場合には、その点も含めてご説明しています。
逸失利益の検討は『増額ありき』ではありません
交通事故のご相談では、「増額できますか」というご質問をいただくことがあります。もちろん、結果として保険会社と協議を行うケースもあります。一方で、当事務所では、まず現在の算定内容がどのような前提で行われているかを確認することを大切にしています。
その結果、保険会社の説明で疑問が解消する場合、追加で資料を確認した方がよい場合、保険会社との協議を検討する余地がある場合など、事案に応じて対応は異なります。このように、一件ごとの事情を丁寧に整理することが、適切な解決につながると考えています。
逸失利益に関するよくあるご質問(FAQ)
Q1 逸失利益とは何ですか。
逸失利益とは、交通事故による後遺障害が原因で、将来得られたはずの収入などが減少すると考えられる場合に、その経済的損失を評価する考え方です。治療費や慰謝料とは異なり、将来にわたる影響を対象とする補償項目であり、後遺障害が認定された事案で問題となることがあります。
Q2 後遺障害が認定されれば必ず逸失利益は認められますか。
後遺障害等級が認定された場合には逸失利益が問題となることがありますが、具体的な算定内容は事案によって異なります。職業や収入、後遺障害の内容、事故後の就労状況など、さまざまな事情を踏まえて検討されるため、一律に判断されるものではありません。
Q3 人身傷害保険でも逸失利益は支払われますか。
人身傷害保険では、契約内容や約款に基づき、逸失利益が保険金に含まれる場合があります。もっとも、具体的な算定方法や支払対象は契約内容や事案によって異なります。
Q4 保険会社から提示された逸失利益は必ず正しいのでしょうか。
保険会社は約款に基づいて保険金を算定します。一方で、逸失利益は複数の前提をもとに評価されるため、算定内容について疑問が生じる場合もあります。提示内容に疑問がある場合には、まず算定の前提や根拠を確認することが大切です。
Q5 逸失利益だけ相談することはできますか。
はい。交通事故では、治療費や休業損害などには争いがなく、逸失利益だけについて確認や相談を希望される方もいらっしゃいます。当事務所でも、そのようなご相談をお受けしています。
Q6 自損事故でも逸失利益について相談できますか。
自損事故では、加害者側との示談交渉は通常ありません。しかし、人身傷害保険を利用する場合には、保険会社が算定した逸失利益について疑問が生じることがあります。そのような場合には、算定の前提や根拠を確認し、必要に応じて保険会社との協議を検討することがあります。
Q7 保険会社との協議はどのような場合に必要になりますか。
すべての案件で協議が必要になるわけではありません。例えば、算定の根拠がよく分からない、事故後の就労状況が十分に反映されていないように感じる、逸失利益だけが想定より低いと感じる、といった場合には、一度内容を確認することも選択肢の一つです。
Q8 相談した結果、増額にならないこともありますか。
あります。実際には、保険会社の算定が適切であり、追加の協議を行う必要がないケースも少なくありません。当事務所では、まず現在の算定内容を確認した上で、事案に応じた見通しをご説明しています。
まとめ|逸失利益は『金額』ではなく『算定の前提』を確認することが大切です
逸失利益は、交通事故の補償の中でも特に専門性の高い項目です。治療費や慰謝料のように比較的イメージしやすい補償とは異なり、将来の就労や収入への影響を評価するため、事故ごとに事情が大きく異なります。そのため、保険会社から提示された金額だけを見て、「高い」「低い」と判断することは容易ではありません。
重要なのは、どのような収入を前提としているのか、後遺障害による就労への影響をどのように評価しているのか、将来の労働能力についてどのような考え方で算定しているのかといった算定の前提を確認することです。人身傷害保険では、約款に基づいて保険金が算定されますが、その適用に当たっては個別事情の評価が重要となる場面もあります。疑問点がある場合には、まず内容を整理し、必要に応じて説明を受けることが納得のいく解決につながります。
当事務所では、交通事故に関するさまざまなご相談をお受けしていますが、特に自損事故などで後遺障害が認定された事案における、人身傷害保険金のうち逸失利益に関するご相談にも対応しています。次のような方は、一度内容を確認することをご検討ください。
- 自損事故で後遺障害等級が認定された
- 人身傷害保険会社から保険金額の提示を受けた
- 他の補償には納得しているが、逸失利益だけが気になる
- 算定根拠について十分な説明を受けられていない
- 保険会社の説明を受けたものの、内容を理解できなかった
- 現在の算定内容が適切かどうか、弁護士の意見を聞いてみたい
当事務所では、まず保険会社がどのような前提で逸失利益を算定しているかを確認し、必要に応じて資料や約款の内容を踏まえながら検討を行っています。なお、事案によっては保険会社の算定が適切であり、追加の協議を行う必要がない場合もあります。そのような場合も含め、現在の状況を丁寧にご説明し、ご相談者様が納得した上で判断できるよう努めています。
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逸失利益を正しく理解するためには、交通事故全体の補償制度や人身傷害保険の仕組みについて知ることも大切です。あわせて、次の記事もぜひご覧ください。
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